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2011年7月24日更新

ユヴェントスのコーポレート・ガバナンス報告書

 

(株式会社オフィス921 景山晴喜)

 

 

 

 

(以下もご参照下さい)
ユヴェントス関連のコラム目次

 

スポーツ団体のガバナンス強化

 

 ユヴェントス1 のアニュアル・レポート2 では、財務諸表3 だけでなく「コーポレート・ガバナンス4 ・アニュアル・レポート」も開示されており、2009年6月期ではアニュアル・レポート全183ページのうち33ページを割いて記載されています。ちなみに、同アニュアル・レポートでは、財務諸表は52ページにわたって記載されています。

 

 ここでは、ユヴェントスの2009年6月期の「コーポレート・ガバナンス・アニュアル・レポート」の構成を取り上げてみます。

 

項目(日本語)5
項目(英語)
主な内容
関連法規6 Glossary

行動規範 (The Code of Conduct)・会社・取引所・開示の関連法規などを記載

 

機関構成 Issuer profile

株主総会・取締役会・監査役会7 の概要などを記載

 

資本構成 Information on ownership structure

株式の種類、大株主の状況、取締役選任手続などを記載

 

法令遵守 Compliance

 

他社との特殊な関係 Direction and co-ordination activities

 

取締役会の概要 Board of directors

ユヴェントスの取締役会」参照

 

企業情報の取扱 Treatment of company information

 

取締役会内に設置した委員会8 Internal committees

3委員会あり以下参照

 

報酬・指名委員会 Remuneration and appointments committee

役員報酬を決定する役割などを記載

 

役員報酬 Remuneration of directors

取締役・監査役報酬の個人別内訳などを記載

 

監査委員会 Audit committee

監査役会・独立監査人(会計士)・内部監査人と連携することなどを記載

 

スポーツ委員会 Sport committee

スポーツ面での企業戦略を取締役会で支援する役割などを記載

 

内部統制システム9 Internal control system


(下記も参照)

 

会社・取締役と関連当事者10 との取引

Interest of directors and operations with related parties

 

監査役の選任 Appointment of statutory auditors

 

監査役の概要 Statutory auditors

 

投資家情報の開示方針 Relations with shareholders

 

株主総会 Shareholders' meeting

 

決算日以降の変更 Changes after the closure of the year of reference

該当なし

 

 

 上記のうち、「内部統制システム」の箇所にユヴェントスの倫理行動規範11 (The Code of Ethics)の要約が記載されていました12 ので、参考までに一部意訳して以下に記載します。13 なお、この倫理行動規範は契約サッカー選手を含む全従業員・全取引先に配布14 しているようです。15

 

・ (ユヴェントスは)スポーツが持つ倫理観を大事にし、クラブに求められる倫理的・社会的な価値を意識して、競技とサッカービジネスのバランスをとります。また、クラブの伝統をけがさない行動をとり、クラブのファンのみならず全てのスポーツファンを尊重します。

 

・ (ユヴェントスは)株主にとって魅力あるクラブになるために、ブランド力を強化し、最高の競技レベルを見せられる体制を作り、事業拡大につながる様々なアイデアを検討して実行します。

 

・ (ユヴェントスは)クラブの目標に向かって必要な貢献をしてくれる、あらゆる個人・グループ・団体とのきずなを強くします。

 

アカウンティング・サマリー:コーポレート・ガバナンス報告書

 

 コーポレート・ガバナンスについて、例えば、東京証券取引所では上場会社全てに対し、有価証券報告書16 などとは別に「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の開示を要請しています。17 委員会設置会社18 用の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の構成は、以下のとおりです。

 

項目
主な内容
基本的な考え方

 

資本構成

・外国人株式所有比率

 

・大株主の状況、支配株主19 (親会社を除く)の有無、親会社の有無

 

企業属性

・上場取引所及び市場区分、決算期、業種、直前事業年度末における(連結)従業員数・売上高

 

・連結子会社数

 

支配株主との取引等を行う際における少数株主の保護の方策に関する指針

 

機関構成・組織運営等に係る事項

・組織形態

 

・定款上の取締役の員数・任期、取締役会の議長、取締役の人数

 

・社外取締役の人数、社外取締役のうち独立役員20 に指定されている人数

 

・各委員会の委員構成及び議長の属性

 

・執行役の人数・兼任状況

 

・監査委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人の有無、監査委員会の独立性に関する事項、監査委員会・会計監査人・内部監査部門の連携状況

 

・独立役員の人数

 

・取締役へのインセンティブ付与の施策実施状況、ストックオプション付与対象者

 

・取締役・執行役報酬の開示状況(全員個別開示or一部個別開示or個別開示せず)、取締役・執行役報酬の額・算定方法の決定方針の有無

 

・社外取締役・社外監査役のサポート状況

 

業務執行、監査・監督、指名、報酬決定等の機能に係る事項

 

現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由

 

株主総会の活性化及び議決権行使の円滑化に向けての取組み状況

 

株主総会招集通知の早期発送、電磁的方法による議決権行使
IRに関する活動状況

個人投資家・アナリスト・機関投資家向けに定期的説明会開催、IR部署・担当者の設置

 

ステークホルダー21 の立場の尊重に係る取組みの状況

 

環境保全活動・CSR22 活動などの実施

内部統制システム23 に関する基本的な考え方及びその整備状況

 

反社会的勢力排除に向けた基本的な考え方及びその整備状況

 

買収防衛策の導入の有無

 

その他

コーポレート・ガバナンスの機関構成などの模式図

 

 

 

(お断り)
本ページの内容中で意見・見解を含む部分は、全て筆者の個人的なものであり、所属する会社や特定の団体の意見を代表するものではありません。本ページは、あくまで開示されている一部の情報を元に事例を研究することを目的に作成されたものであり、有価証券や金融商品の価値等についての助言、投資その他の勧誘、税務相談、法律相談等を行うことは目的としておりません。本ページは信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、内容及び情報の正確性や完全性等に関して、株式会社オフィス921は、いかなる責任も持ちません。本ページに記載された意見は作成日における判断であり、内容は予告なく変わる場合があります。

 

(脚注)

1 アニュアル・レポートはユヴェントスHPのFinanceページで入手可能
2 「アニュアル・レポートは、日本語では「年次報告書」とも呼ばれ、企業が年度末にディスクロージャー(情報公開)という観点から、世界の株主や投資家、金融機関などの関係先に配布する、経営内容についての総合的な情報を掲載した冊子をいう。」(「会社・経営用語集」iFinance HP)
3 財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書などが含まれる。(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」)第1条を参照して用語を使用している。)
4 「スポーツ団体のガバナンス強化」のアカウンティング・サマリー:コーポレート・ガバナンス 参照
5 意訳した。
6 日本での関連法規の位置づけは、以下のとおりである。
「事業活動に関わる法令等は、以下のものから構成される。
(1)法令:組織が事業活動を行っていく上で、遵守することが求められる国内外の法律、命令、条令、規則等。
(2)基準等:法令以外であって、組織の外部からの強制力をもって遵守が求められる規範。例えば、取引所の規則、会計基準等。
(3)自社内外の行動規範:上記以外の規範で組織が遵守することを求められ、又は自主的に遵守することを決定したもの。例えば、組織の定款、その他の内部規程、業界等の行動規範等。」(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」2007年(平成19年)2月 企業会計審議会)
7 「Collegio Sindacaleは、S.p.A.(注:日本の株式会社に相当)および一定の条件を満たすS.r.l.(注:日本での持分会社に相当)に設置される組織で、もっとも近い日本語は「監査役会」になりますが、会計監査のみならず、会社が関連する諸法令を遵守し、適正な運営が行われているかを監督する義務を負うという点で、日本の監査役会とは若干異なる組織であるといえます。また、Collegio Sindacaleは、少なくとも90日に一度開催されなければならないとされています。
このCollegio Sindacaleは、3名の正監査役(2名の補欠監査役を加えることも可能)によって構成され、正監査役のうち少なくとも1名は会計監査人登録をしている個人から選任されなければなりません。」(「イタリア政治経済の現状および投資制度」2008年11月 KPMGジャパンHP)
8 日本の委員会設置会社と類似しているが、監査役会との両立や委員会の構成などが異なる。
「委員会設置会社とは、監査役制度に代わり、社外取締役を中心とした指名委員会、監査委員会、報酬委員会の三つの委員会を設置するとともに、業務執行を担当する役員として執行役が置かれ、経営の監督機能と業務執行機能とを分離した会社です。」(「委員会設置会社」あずさ監査法人HP)
9 日本での内部統制システムとは、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令(注:下記の会社法施行規則)で定める体制の整備」(会社法第362条4項6号)のことであり、具体的には以下のとおりである。
「・取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
・損失の危険の管理に関する規程その他の体制
・取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
・使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
・当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
(以下は監査役設置会社のみ)
・監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
・前号の使用人の取締役からの独立性に関する事項
・取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
・その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制(取締役会の議事録)」(会社法施行規則第100条1項・3項)
10 日本での関連当事者とは、「ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいい、次に掲げる者をいう。
(1)親会社
(2)子会社
(3)財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
(4)財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(以下「その他の関係会社」という。)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社
(5)関連会社及び当該関連会社の子会社
(6)財務諸表作成会社の主要株主及びその近親者
(7)財務諸表作成会社の役員及びその近親者
(8)親会社の役員及びその近親者
(9)重要な子会社の役員及びその近親者
(10)(6)から(9)に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
(11)従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る。)
なお、連結財務諸表上は、連結子会社を除く。また、個別財務諸表上は、重要な子会社の役員及びその近親者並びにこれらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社を除く。」(「関連当事者の開示に関する会計基準」2006年(平成18年)10月 企業会計基準委員会)
11 日本での倫理行動規範の位置づけは、以下のとおりである。
「取締役会や監査役等の責任は、商法等の関連法規や取引所の上場審査基準、企業が所属する経済団体の倫理綱領、又は企業が定める倫理行動規範、取締役会規程、監査役会規程等に概括的に記載されている。適正な財務報告を行うために経営者を牽制することは,ガバナンスの役割の一つである。」(「企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスクの評価」2006年(平成18年)3月 監査基準委員会報告書第29号 日本公認会計士協会)
12 "The cutting-edge of Code of Ethics is based on the following key principles to:
* promote the sports ethic and conciliate the professional and economic dimensions of football with its ethical and social values, maintaining at the same time a style of conduct in harmony with its tradition and respecting its own supporters and, more in general, all sports fans;
* create value for its shareholders through the enhancement of the brand, the maintenance of a sports organisation of an excellent technical level, the examination and implementation of projects for the diversification of activities;
* maintain and develop relations of trust with its stakeholders, i.e. all the categories of individuals, groups or institutions whose contribution is needed to achive company goals."
13 「ユヴェントスのビジョンと戦略」(ユヴェントス日本語HPの「Club」)には以下のように記載されている。
「このような原則の中で、サポーターを始めとする、スポーツの熱狂的ファンの人々と共に、スポーツにおける倫理を促進するという意思と、サッカーのスポーツとビジネスの側面と社会的な倫理を調和させるという意思を持ち、クラブの伝統との調和を図りながらこの経営スタイルを維持させることである。
株式会社としてのユヴェントスは、信用に基づいて弊社との関係を維持し発展させていこうとする株主に対していくつかの義務を担っている。この自覚をふまえた上でのクラブの目標は、クラブのブランド価値の向上、トップレベルのスポーツ組織であり続けること、クラブの活動を多様化させるために学びそして実行していくことである。」
14 "Furthermore, the Code of Ethics has been delivered to all employees, including professional footballers, FIGC registered technical personnel and all others concerned. It has also published on the official Juventus site in the section on Corporate Governance (http://www.juventus.com). Consultants, suppliers and commercial partners have also been informed of the adoption of the Code of Ethics through the mailing of information or, when underwriting contracts, the inclusion of specific clauses recalling the principles expressed in it."
15 なお、ユヴェントスは以前、競技に関する不正を行ったとして処分を受けている。詳細は「ユヴェントスとルチアーノ・モッジをめぐるイタリアサッカー界の史上最悪のスキャンダル。」(2006年5月「フランコさんのイタリア通信。」ほぼ日刊イトイ新聞HP)など参照。
16 有価証券報告書とは、会社の商号、会社の属する企業集団及び会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書のことである。(金融商品取引法第24条)
スポーツチームと会計監査」も参照。
17 「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」東京証券取引所HP 参照
18 委員会設置会社については8参照
19 「支配株主とは、次の(1)(2)のいずれかに該当する者をいいます。
(1)親会社(財務諸表等規則第8条第3項に規定する親会社をいう。→注:他の会社等の財務及び営業または事業の方針を決定する機関(株主総会など)を支配している会社等)
(2)主要株主(金融商品取引法第163条第1項に規定する主要株主をいう。→注:自己または他人の名義をもって総株主等の議決権の百分の十以上の議決権を保有している株主)で、当該主要株主が自己の計算において所有している議決権と、次に掲げる者が所有している議決権とを合わせて、上場会社の議決権の過半数を占めているもの((1)を除く。)
*当該主要株主の近親者(二親等内の親族をいう。)
*当該主要株主及び当該主要株主の近親者が、議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等(会社、指定法人、組合その他これらに準ずる企業体(外国におけるこれらに相当するものを含む)をいう。)及び当該会社等の子会社」(「支配株主等に関する事項」東京証券取引所HP)
20 「(独立役員とは)一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいう。
東証では、一般株主保護の観点から、上場会社に対して、独立役員を1名以上確保することを企業行動規範の「遵守すべき事項」として規定いたしました。」(「独立役員」東京証券取引所HP)
21 「ステークホルダーとは、株主、従業員、消費者など、企業を取り巻くあらゆる利害関係者のことをいいます。」(「コーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領」東京証券取引所HP)
22 「CSR(注:Corporate Social Responsibility)とは、企業が法令順守にとどまらず、市民・地域および社会に貢献する形で、経済・環境・社会課題においてバランスの取れた事業活動を営むこと、また、その結果を主体的に公表し、説明責任を果たしていくことであると、一般に解釈されております。」(「CSRサービス」新日本有限責任監査法人HP)
23 9参照

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