オフィス921

スポーツアカウンティング / スポーツビジネスコンサルティング / プロスポーツ選手に対するファイナンシャルプランニング

ニュースリリース

ニュース一覧に戻る

2011年5月8日更新

ユヴェントスのキャッシュ・フロー計算書

 

(株式会社オフィス921 景山晴喜)

 

 

 

(以下もご参照下さい)
ユヴェントス関連のコラム目次

 

 ここでは、ユヴェントスのアニュアル・レポートに記載されている財務諸表のうち、キャッシュ・フロー計算書(後述のアカウンティング・サマリー参照)を取り上げてみます。なお、1ユーロについて、2008年6月期は167円、2009年6月期は152円で換算しています。1

 

(単位:百万円、△はマイナス)

科目(日本語)2
科目(英語)
注記
2008/6
2009/6 3
         
税引前利益(損失) Net income/(loss) before taxes
△ 1,572
2,038
         
非資金項目: Non-cash items:
   
- 償却費、減価償却費、除却損 - amortization, depreciation and write-down
6,417
4,923
- 引当金戻入額 - provision release
△ 30
- 従業員給付4 費用及びその他の引当金繰入額 - employee benefit liability and other provisions
125
75
- 施設関連引当金5 繰入額 - infrastructure expenses provision (Campi di Vinovo operation)
2,641
117
- 無形資産(選手移籍)売却益 - gains on disposal of players' registration rights
△ 2,771
△ 2,410
- その他の固定資産売却益 - gains on disposal of other fixed assets
△ 16
△ 4
- 無形資産(選手移籍)売却損 - losses on disposal of players' registration rights
71
29
- その他の固定資産売却損 - losses on disposal of other fixed assets
0
14
- 金融収益 - financial income
△ 847
△ 636
- 金融費用 - financial expenses 6
701
591
         
売掛金及びその他の非金融債権7 の増減 Change in trade receivables and other non-financial activities
177
△ 1,788
買掛金及びその他の非金融債務8 の増減 Change in trade payables and other non-financial liabilities
△ 4,173
2,628
支払法人所得税 Income taxes paid
△ 579
△ 723
従業員給付債務及びその他の引当金の支払額 Utilisation in employee benefit liability and other provisions
△ 312
△ 76
営業活動によるキャッシュ・フロー
Net cash from/(used in) operating activities
△ 168
4,778
         
無形資産(選手関連)9 の取得による支出 Investments in players' registration rights
△ 10,788
△ 6,104
営業債務(選手関連)10 の増減 Increase/(decrease) of payables related to players' registration rights
4,032
△ 948
無形資産(選手関連)11 の売却による収入 Disposals of players' registration rights
4,669
3,365
営業債権(選手関連)12 の増減 (Increase)/decrease of receivables related to players' registration rights
3,172
2,911
その他の固定資産の取得による支出 Investments in other fixed assets
△ 235
△ 1,740
その他の固定資産の売却による収入 Disposals of other fixed assets
12
0

その他の固定資産(スタジアム及びCampi di Vinovo 13 )の処分に関連する債権の増減

(Increase)/decrease of receivables related to disposal of other fixed assets (Stadium and Campi di Vinovo)
△ 2,509
受取利息14 Interest income
180
124
受取配当金15 Dividends received
49
その他の増減16 Other changes linked to investments
0
投資活動によるキャッシュ・フロー
Net cash from/(used in) investing activities
△ 1,418
△ 2,392
         
ファイナンス・リース17 債務の増加 New financial leasing
6
ファイナンス・リース債務の返済による支出 Financial leasing repayments
△ 218
△ 209
ファイナンス・リース債務の支払利息 Interest on financial leasing
△ 183
△ 127
その他の支払利息 Other interest expenses
△ 2
△ 1
その他の増減18 Other movements related to the financial activities
△ 80
73
財務活動によるキャッシュ・フロー
Net cash from/(used in) financial activities
△ 477
△ 264
         
現金及び現金同等物19 の増減
Net cash from/(used in) the year
△ 2,063
2,122
   
現金及び現金同等物の期首残高20
Cash and bank overdrafts at the beginning of the year
6,676
4,721
         
為替変動による影響21
108
△ 1,166
         
現金及び現金同等物の期末残高22
Cash and bank overdrafts at the end of the year
4,721
5,677

 

 内訳などは別途追加する予定です。

 

アカウンティング・サマリー:キャッシュ・フロー計算書

 

 キャッシュ・フロー計算書とは、現金預金を中心とする企業の資金が、期首残高から期末残高へと変化した原因を明らかにするために、企業活動を営業・投資・財務の3つに区分して、資金の流れをこれに関連づけて示したものです。23

 

 キャッシュ・フロー計算書(間接法24 )の構成は、以下のとおりです。25

 

区分
主な内容
営業活動によるキャッシュ・フロー 税引前当期純利益、減価償却費、売上債権増減、棚卸資産増減、仕入債務増減
   
投資活動によるキャッシュ・フロー 投資有価証券取得支出・売却収入、有形固定資産取得支出・売却収入、貸付金支出・回収収入
   
財務活動によるキャッシュ・フロー 借入金収入・返済支出、社債発行収入・償還支出、株式発行収入
   
現金及び現金同等物の増減額(上記合計)
 
   
現金及び現金同等物の期首残高
 
   
現金及び現金同等物の期末残高(上記合計)
 

 

 キャッシュ・フロー計算書の分析の一例として、企業の成長フェーズに応じた、3つのキャッシュ・フローの傾向をまとめると、以下のとおりです。26

 

成長期
安定期
経営破綻
営業活動によるキャッシュ・フロー
プラス
プラス
マイナス
       
投資活動によるキャッシュ・フロー
マイナス
マイナス
(低水準)
プラス
       
財務活動によるキャッシュ・フロー
プラス
マイナス
プラス

 

 企業の成長期においては、将来に向けた投資が不可欠となることから、一般的に営業活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローを獲得し、それを投資活動によるキャッシュ・フローに振り向けるケースが多くなります。この結果として、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスに、営業活動によるキャッシュ・フローや財務活動によるキャッシュ・フローはプラスになる傾向にあります。

 

 一方、安定期にある企業は、営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで安定的に推移しますが、当該キャッシュ・フローを設備などへ投資にあてるより、むしろ有利子負債の返済などにキャッシュを優先的に振り向けることが多くなる傾向にあります。結果として、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、財務活動によるキャッシュ・フローはむしろマイナスを示す傾向にあります。

 

 さらに経営危機にある企業は、資金繰りがうまくいっておらず、営業活動でキャッシュを生み出すことができていないケースが多いようです。このため有利子負債による資金調達などでキャッシュを獲得する必要があり、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスになる傾向にあります。一方で、資産などの売却でキャッシュを生み出す必要があることから、投資活動によるキャッシュ・フローはむしろプラスとなることが多いようです 。27

 

 

(お断り)
本ページの内容中で意見・見解を含む部分は、全て筆者の個人的なものであり、所属する会社や特定の団体の意見を代表するものではありません。本ページは、あくまで開示されている一部の情報を元に事例を研究することを目的に作成されたものであり、有価証券や金融商品の価値等についての助言、投資その他の勧誘、税務相談、法律相談等を行うことは目的としておりません。本ページは信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、内容及び情報の正確性や完全性等に関して、株式会社オフィス921は、いかなる責任も持ちません。本ページに記載された意見は作成日における判断であり、内容は予告なく変わる場合があります。

 

(脚注)

1 換算レートについては「ユヴェントスの損益計算書(包括利益計算書)」参照
「外貨建取引から生じるキャッシュ・フローは、キャッシュ・フローの発生日における為替レートを用いて、機能通貨(注:「ユヴェントスの損益計算書(包括利益計算書)」参照)にてキャッシュ・フロー計算書に表示される(IAS7.25)。また、在外子会社のキャッシュ・フローについても、同様にキャッシュ・フローの発生日における為替レートで換算される(IAS7.26)。いずれにおいても、IAS第21号「外国為替レート変動の影響」で認められている発生日の為替レートに近似する一定期間の加重平均レートなどを用いることができる(IAS7.27)。」(「完全比較 国際会計基準と日本基準」新日本有限責任監査法人編著 レクシスネクシス・ジャパン刊 参照)
2 名称や科目などの日本語訳については、「国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例の公表について」(2009年(平成21年)12月 金融庁HP)、「完全比較 国際会計基準と日本基準」(新日本有限責任監査法人編著 レクシスネクシス・ジャパン刊)などを参照した。
3 新しい年度の数値について、ユヴェントスのアニュアル・レポートでは左側に記載されているが、有価証券報告書の表記に合わせて右側に記載した。
4 「従業員給付とは、従業員が提供した勤務と交換に、企業が与えるあらゆる形態の対価をいう(IAS19.7)。従業員は、企業に常勤又は時間制で、常時、不定期又は一時的に勤務を提供するものであり、取締役及び他の役職者を含む(IAS19.6)。
IAS第19号は退職後給付に限定されず、その他の従業員給付についても取り扱う広範な基準書であるのに対し、(注:日本の退職給付に係る会計)基準は退職給付のみを取り扱っており、そのカバーする範囲が大きく異なる。」(参照書籍は1と同じ)
5 直訳しているため一般的な科目名ではない。
なお、内容は「IFRS開示の特徴(ユヴェントスを参考として)」参照。
6 Financial incomeとFinancial expensesを「ユヴェントスの損益計算書(包括利益計算書)」と比較すると、2009/6のFinancial expensesについてIncome statementでは4,657,145ユーロに対しCash flow statementでは3,885,648ユーロと一致していないが、その他は一致している。
7 直訳しているため一般的な科目名ではない。なお、金融資産については「ユヴェントスの貸借対照表(財政状態計算書):資産」参照。
8 直訳しているため一般的な科目名ではない。
9 無形資産(選手関連)は「ユヴェントスの貸借対照表(財政状態計算書):資産」と対応している。
10 営業債務(選手関連)は「ユヴェントスの貸借対照表(財政状態計算書):資本・負債」と対応している。
11 9と同じ
12 営業債権(選手関連)は「ユヴェントスの貸借対照表(財政状態計算書):資産」と対応している。
13 「IFRS開示の特徴(ユヴェントスを参考として)」参照
14 「受取利息、受取配当金、支払利息及び支払配当金から生じるキャッシュ・フローは、営業活動、投資活動、財務活動のいずれに分類することも認められる。ただし、それぞれの項目は別個に開示される必要があり、また、分類の方法は毎期継続しなければならない(IAS7.31)。」
「日本基準との差異:日本基準では、利息及び配当金の分類について、以下2つの方法の選択適用が定められている。
① 受取利息、受取配当金及び支払利息を営業活動によるキャッシュ・フロー、支払配当金を財務活動によるキャッシュ・フローに分類
② 受取利息及び受取配当金を投資活動によるキャッシュ・フロー、支払利息及び支払配当金を財務活動によるキャッシュ・フローに分類」
(以上、参照書籍は1と同じ)
15 14と同じ
16 直訳ではなく意訳している。
17 (ファイナンス・リースとは)「資産の所有に伴うリスクと経済価値が実質的にすべて借手に移転するリース取引をいい、所有権移転の有無は問わない。リースがファイナンス・リースであるか、オペレーティング・リースであるかは、契約の形式よりも取引の実質を見て判断される。(IAS17.4.10)」(参照書籍は1と同じ)
18 16と同じ
19 現金及び現金同等物については「ユヴェントスの貸借対照表(財政状態計算書):資産」参照
20 2008/6のCash and bank overdrafts at the beginning of the yearについては、2007年6月末のレートである、1ユーロ=165円(165.64円より)で換算した。(参照は1と同じ)
なお、科目名は直訳ではなく意訳している。
21 当項目で換算差額を調整した。
22 直訳ではなく意訳している。
23 「キャッシュ・フロー会計と企業評価」桜井久勝・蜂谷豊彦・百合草裕彦著 伊藤邦雄編集 中央経済社刊 参照
24 間接法とは、損益計算書の利益数字から出発して所定の調整項目を加算・減算することにより、1期間の資金の増減が算定される表示方法である。一方、直接法とは、営業活動に関連する収入項目の総額と支出項目の総額を明示して、その差額として1期間の資金の増減が算定される表示方法である。(参照書籍は23と同じ)
25 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」内閣府令、「企業会計原則」企業会計審議会
26 「ゼミナール 現代会計入門」伊藤邦雄著、日本経済新聞社 参照
27 参照書籍は26と同じ

お問合せ
ページの上部へ